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5月9日20時36分配信 毎日新聞  

経営再建中の日本航空(JAL)は9日、07年3月期連結決算を発表した。本業のもうけを示す営業利益は同社の当初予想を100億円上回り、前期の268億円の赤字から229億円の黒字に転換した。しかし、厚生年金の代行返上益という一過性の利益でかさ上げされたもので、それを除いた実質ベースでは赤字。“安定飛行”への課題は山積しており、2期連続で過去最高益を更新した全日本空輸(ANA)との業績格差は依然として大きい。 最終(当期)損益は、将来の利益を見越して計上していた「繰り延べ税金資産」を監査法人の指摘で取り崩した結果、162億円の赤字だった。 JALの業績は今年2~3月からようやく上向き始め、07年3月期の旅客収入は国際線が前期比5.0%増、国内線も同2.4%増えた。国土交通省幹部は「JALの業績は回復基調にある」と評価し、JALに融資がある主要金融機関も「長い目で見る」としている。 だが、営業利益の中身を分析すると、実態は赤字といえる。07年3月期は、国に代わって運用していた厚生年金の代行部分の返上益360億円を計上したため、利益がかさ上げされたのだ。 特に深刻化しているのは、国内線旅客1人当たりの単価の低下で、ANAとの差は約262円ある。年間旅客数約4500万人を掛けると、115億円にのぼる格差だ。 安全トラブルなどで離れた単価の高いビジネス客が戻っていないためで、会見した竹中哲也常務は「ビジネス客奪回にあらゆる努力が必要」と危機感をにじませた。 取り巻く環境も良いとは言えない。空の自由化を掲げる政府の「アジア・ゲートウェイ戦略会議」で羽田空港の国際線拡大を求める声が強まっており、今月中旬に最終答申がまとまる予定。実現した場合、JALが基盤とする成田空港の相対的な地位低下を招く可能性がある。極端に運賃が安い海外の格安航空会社の参入も脅威だ。燃費のよい機材への更新も遅れ気味で、原油価格が再び高騰すればANA以上に大きな打撃を受けかねない。 08年3月期の決算予想は、2月の中期計画発表時とほぼ同額で、営業利益350億円、最終利益70億円を見込む。早期退職の勧奨や退職金カットなどの経費削減で500億円の利益押し上げを目指す。早期退職は、すでに部長級以上の250人が応募しているが、さらに次課長級で450人の募集が必要で、秋にも実施する方針だ。【辻本貴洋】

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